なるほど告知欄じゃねーの

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投下代行スレ

1 :風と木の名無しさん:2011/06/16(木) 12:22:02 ID:h0wT/kes0
アクセス規制や忍法帖レベルが足りないなどの理由で本スレに投下できない人が
作品を投下して、誰か他の人に本スレに投稿してもらうスレです。

代行を依頼したい書き手さんは投稿する内容をテキストファイルにまとめたもの
をアップローダーにアップするか、このスレッドに直接投稿してください。

例:
【名前欄】作品タイトル 1/3(←投下時のナンバリング・適宜変更してください)
【メール欄】sage
【本文】 http://morara.kazeki.net/upload/img/059.txt

アップローダー
http://morara.kazeki.net/upload/


101 :風と木の名無しさん:2011/12/11(日) 13:03:09 ID:u1KEU/u20
>>99
完了しました

102 :99:2011/12/11(日) 17:04:09 ID:hDjSTgfg0
>>100-101
代行有難うございました!
初めて投下しようと思った作品でしたので助かりました。

103 :風と木の名無しさん:2011/12/30(金) 05:11:56 ID:sCfpFA2I0
レベル不足の為、お手数ですが代行お願い致します。

【名前欄】Forget-me-not 1/7〜7/7
【メール欄】sage
【本文】http://morara.kazeki.net/upload/img/082.txt

104 :風と木の名無しさん:2011/12/31(土) 00:21:57 ID:lN9sJBAQ0
>>103
( ^ω^)おっおっ

105 :風と木の名無しさん:2011/12/31(土) 00:25:44 ID:lN9sJBAQ0
>>103
終わったお

106 :103:2011/12/31(土) 04:03:09 ID:hpgCuxUQ0
>>105さん
代行ありがとうございました!

107 :風と木の名無しさん:2012/01/02(月) 19:26:32 ID:WlTqb0Mc0
すみません、規制のためどなたか代行お願いします。
このレス含め6レスほどお借りします。

【名前欄】花の夢 0/5
【メール欄】sage
【本文】
半生il注意。
元旦スペの早見×九差壁

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!


108 :風と木の名無しさん:2012/01/02(月) 19:28:07 ID:WlTqb0Mc0
【名前欄】花の夢 1/5
【メール欄】sage
【本文】
 彼は、薄汚れた壁を眺めながら、ぼんやりと考える。
 考える時間だけはいくらでもあった。彼にとって、今生きていることは計画外のことであり、それゆえ彼は静かだった。
 余生を過ごすというのはこんな感じなのだろうかと、彼は考えていた。
 彼は生きているはずではなかった。けれど、死ぬと決めたときに死ななかった。死ねなかったのではないし、
死にぞこなったというのも少し違う。ただ、死ななかった。それはまぎれもなく彼の意志だったが、だからといって、
生きる希望を持っているわけではない。
 つまるところ、今生きていることは、彼にとって余りの時間だった。

 未来を考える機能が壊れてしまった彼は、ぼんやりと過去ばかりを思い出していた。
 例えば、7年間働いていた屋台珈琲店。他人から見れば不安定で夢も希望もないような仕事だっただろうが、
彼には彼なりの誇りと愛着があった。ろくに体を動かすこともできないほど狭い店内の、一つ一つを、彼は今でもありありと瞼の裏に思い描くことができた。
 例えば、思い出と呼べるほどの思い出もない、父親のことを。父親の死が彼に与えた影響は強かったのだろう。
 だが、それは悲しみというより、不意に横殴りにされたような重い衝撃だった。父親の死に顔を見ても、
 悲しめるほどの思い出すら彼の中にはなく、悲しみに浸ってしまいたいのに、ひたすら空虚だった。
 泣くこともできない虚ろの中で、こんなに近くにいたのにという衝撃だけが、唯一リアルな手触りを持っていた。

 そして、例えば ─── あの人のことを。


109 :風と木の名無しさん:2012/01/02(月) 19:30:47 ID:WlTqb0Mc0
【名前欄】花の夢 2/5
【メール欄】sage
【本文】
ある男との出会いが、彼に一つの計画を思いつかせ、実行させた。それは二重構造になっており、男の計画を隠れ蓑にして、
彼自身の目的を叶えようというものだった。
だが、彼は知っていた。本来、二重構造のおもちゃ箱は、目的という名のコインを入れれば、隠しBOXへ落ちる仕掛けになっているべきだ。
けれども、彼の作ったおもちゃ箱では、コインはどこにも留まらない。いっとき留まったかのように見えても、
スルリと抜け落ちて、誰の望みも叶えはしない。
彼は初めから知っていた。十億を手にして公園を買い取るなど、夢物語でしかないと。
知っていて行動に移したのは、彼には失うものが何もなかったからかもしれない。別にそれは、今まで、彼を絶望させたりはしなかった。
彼は家族に縁薄く、特別親しい友人も持たなかったが、だからといって自分を不幸だと思っていたわけではなかった。
彼は彼の人生を生きており、この特別幸せでも、特別不幸せでもない日々こそが、そこらじゅうにありふれている生活なのだと知っていた。
その意味では、彼は確かに自分の人生を受け入れていたし、国や政府に対する強い憤りなどもってはいなかった。

─── そういう意味では、自分よりずっと、あの人のほうが、純粋だった。

初めから、犯罪で手にした十億で、公園を買い取ることなど不可能だと知っていた。それでも彼が実行に移したのは、
その目的は、突き詰めてしまえば、自己満足であったのかもしれない。
誰もかえりみることのない人々に、傘を差し出して、ほんのいっとき守ろうとするような自己満足だ。
長期的に見れば誰も助けていない。本当に彼らのことを思うならば、もっと別の方法を取るべきだ。……だけど、本当にって、なんだ?
ほんの一瞬、差し出された傘に、心が救われることだってある。たとえ無意味でも、何も成していなくとも、
そんな優しさが必要なときだってある。彼はそれを知っていた。彼の人生において降り注いできた優しさというのは、
常にそういった類のものだったからだ。だから、彼もまた、自己満足という名前の傘を誰かに差し出して、ほんのいっとき守ってやりたかった。

─── それを、あの人に話していたら、あの人はなんと答えてくれただろうか?



110 :風と木の名無しさん:2012/01/02(月) 19:32:19 ID:WlTqb0Mc0
【名前欄】花の夢 3/5
【メール欄】sage
【本文】
わからない。彼が問いかけることはなかった。なぜなら彼にとって男は本物の桜だった。彼自身は、
季節に左右されることもなく店の隅で埃を被っている造花だったが、男は春にしか咲かない本物の美しい花だった。
少なくとも彼は、そう思っていた。
だから彼は、男に真実を打ち明けることはなかった。造花の理論など、本物の花には理解できないだろうし、
して欲しいとも思わない。本物の花には、本物の花としての生き方がある。それは造花の彼から見れば、あまりに理想主義で、
現実から程遠く、哀れなほどに夢想的だったが、同時に、手を触れることが叶わぬほど美しかった。
夢を見ることをやめてしまった彼にとって、男の語る理想は、赤々と燃える太陽のようだった。美しかった。
決して手が届かないとわかっていても、頷いてしまうほどに。
いっそ男の語る理想に身をゆだねてしまうかと思ったことも、一度や二度ではなかった。男と過ごす時間は、
彼にとって久しぶりに温かく、幸福だった。理想以外のことを話しているとき、男は彼を弟か、まるで息子のように扱った。
ぞんざいで、荒々しく、それでいて楽しげに。何度も使い走りにされて、彼の部屋には男の好む銘柄の煙草ばかりが増えた。
お前は若いくせに体力がないと呆れられて ─── 男に比べればほとんどの若者が体力なしだろうと彼は
内心で思ったが ─── 早朝マラソンに付き合わされたこともある。柔軟体操も大切だと、足を開いた状態で思い切り背中を押されて、
股関節が脱臼するかという目にあったこともあった(その時ばかりは、さすがの彼も涙目になって抗議した)

楽しかった。今になって、あの人のことばかり思い出すほど。

いっそ、男がただの友人に戻ることを望んだなら、彼は計画すら捨てたかもしれない。
だが彼はわかっていた。もし彼が、共犯者としての立場を捨て、ただの友人としての関係を望んだなら、
男は何もいわず彼の元を去っただろう。男はどこまでも本物の桜だった。造花にはなってくれない。永遠に。
そして彼もまた、そんな男を愛していた。造花にはなれない、どこまでも純粋で理想主義な男を、守ってやりたかった。



111 :風と木の名無しさん:2012/01/02(月) 19:33:40 ID:WlTqb0Mc0
【名前欄】花の夢 4/5
【メール欄】sage
【本文】
男の理想に身をゆだねてしまおうかと思う日もあった。どこまでも男についていって、ともに死んでしまおうかと考える日もあった。
男との日々が永遠に続かないかと願う日もあった。計画の全てを捨てて、平凡だがそれなりに幸せな生活を、
男とともに生きていけないだろうかと祈る日もあった。


けれど彼は、そのどれも選ばず、ここにきた。結局は、初めの計画を変えることなく、男を欺き、殺し、金を奪い、
包囲されて…………ただ一つ、計画と違うのは、生きていることだけだ。

死ぬはずだった時に死ななかったから、今さら死ぬ気にもなれなくて、彼は毎日を生きている。

ここに至るまでのことを、毎日ぼんやりと思い出しているけれど、特に後悔も悲しみも浮かばない。
これで良かったのだと思う。彼はいまや凶悪な犯罪者だ。金目当てに幼い子供たちを誘拐し、仲間を操り罪をなすりつけ、
挙句に殺した。忌まわしい事件の主犯、唾棄すべき犯罪者。……男の理想が汚される日は来ない。
造花は踏みにじられてもいい。けれど本物の桜が、真実美しいものが、ゴミのように扱われるのは耐えられない。
汚されるくらいならば、永遠に隠しておく。男の理想を知っているのは自分だけでいい。あの人が何を憂い、何を願って、
どんな風に生きていたかは、誰にも語らない。自分の罪状がどれほど重くなろうとどうでもいい。裁判で、報道で、
男の心がしたり顔で解説される日など、永遠に来させはしない。これはただの金目当ての誘拐であり殺人だ。それでいい。

あの人の真実は、自分が胸の中に隠し持って、墓まで抱いていく。

そのために、自分はあの人を殺したのだから。



112 :風と木の名無しさん:2012/01/02(月) 19:35:13 ID:WlTqb0Mc0
【名前欄】花の夢 5/5
【メール欄】sage
【本文】
ただ、彼には一つだけ不思議なことがあった。
夢を見るのだ。男の夢を。
夢の中で、男は何も語らない。裏切り者である彼を、罵りも蔑みもしない。
自分の願望が見せているにしては、不可解な夢だった。彼はむしろ、男に徹底的に軽蔑されることを望んでいた。
本物の桜である男なら、必ずそうするだろうと思ってもいた。
造花の自分を理解して欲しいと思っていたわけではないし、慈悲を請うていたわけでもなかった。

なのに、どうして。

──── 夢の中で、男はいつも、笑っているのだろうか。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


113 :風と木の名無しさん:2012/01/03(火) 18:22:20 ID:ednRi+2I0
>>112
投稿完了。

114 :107:2012/01/03(火) 22:53:09 ID:+Rz9XI1g0
>>113
代行ありがとうございました!助かりました!

115 :風と木の名無しさん:2012/01/13(金) 19:20:30 ID:pspqYPCM0
忍法帖レベル不足のため、お手数おかけしますが、投下代行よろしくお願いします。

【名前欄】深夜の電車内にて
【メール欄】sage
【本文】http://morara.kazeki.net/upload/img/083.txt

116 :風と木の名無しさん:2012/01/13(金) 23:08:11 ID:5lNRiZ620
>>115
( ^ω^)おっおっ

117 :風と木の名無しさん:2012/01/13(金) 23:10:38 ID:5lNRiZ620
>>115
終わったお

118 :115:2012/01/14(土) 15:11:32 ID:f6qbahaA0
>>116-117
投下ありがとうございます。
お手数おかけしました。

119 :風と木の名無しさん:2012/01/30(月) 10:04:19 ID:vEbQDPGU0
忍法帖レベル不足のため、お手数おかけしますが、投下代行よろしくお願いします。

【名前欄】アラウンド70 1/4
【メール欄】sage
【本文】
皇帝×公爵
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

皇帝の私室には、天鵞絨張りの瀟洒な安楽椅子がある。
背持たれや座だけでなく肘掛けの部分にも詰め物をした、ゆったりとくつろげる大きな安楽椅子は、老齢の皇帝、愛用の一脚だ。
椅子の前には趣のある上質の壁紙が張られた壁があり、壁には縁の装飾が美しい大型の姿見が掛けられている。
麗しく老いた公爵は、安楽椅子に座した老皇帝の屹立に後ろ向きに腰をおろした。
目の前の全身鏡は、背面座位で繋がる二人を映じている。
老いてなお精悍な皇帝は、白髪美翁な公爵の脚を大きく広げ、
半裸の公爵の加齢によって白くなった恥毛を指先で弄びながら、鏡の中の公爵と目を合わせた。
「卿もここが真っ白になったな」
公爵の首筋に口づけをひとつ落とし、年を重ねたセロの様な深く低い声で囁く皇帝のそこも色を変えて久しい。
金獅子王と呼ばれた皇帝の豪奢な金髪は、老いてすっかり銀色になってしまった。下叢も然りだ。
公爵は皇帝の囁きと内耳をくすぐる吐息に赤面した。
初めてそこに白い毛を一本見つけた夜、公爵は焦燥感を覚え歎いたものだ。
互いの下叢がこんなにも白くなるまで、皇帝との関係が永らうとは想像だにしなかった。
公爵が思いを巡らせていると、皇帝は背後から皴深い大きな手を伸ばし、芳香花の精油を用いて公爵の花芯を刺激しながら、
もう片方の手で老いて感じやすくなった公爵の胸の双茱を、左右交互に愛撫した。
下から力強く皇帝に後蕾を穿たれ、同時に胸と股間を愛される。老いた身体では受け止めきれない強い快感に老体を炙られた公爵は、
熱く潤んだ瞳で鏡の中の皇帝の碧眼を見つめ、切なげに喘ぎ悶えた。
「今宵の卿は、そこかしこ華やいでおるな」
いつになく花芯が硬度を保ち、胸の双茱もツンと勃っていることを皇帝に指摘された公爵は、羞恥に目を伏せた。



120 :風と木の名無しさん:2012/01/30(月) 10:04:50 ID:vEbQDPGU0
【名前欄】アラウンド70 2/4
【メール欄】sage
【本文】
ここのところ公爵の花芯は、強壮の薬用酒の力を借りても決して頭を擡げなかった。
皇帝の老巧な指玩や口淫にふっくらと膨らみはしても、その先端がかつての様に瑞瑞しく張る事はなく、
快感を追い、欲を吐き出すことが出来ずにいたのだ。けれど、今宵は花芯がはしたないほど濡れている。
艶やかに張りつめた先端は、若かりし頃の様にきらきらと淫蜜を零し、皇帝の大きな手を濡らした。
老齢の皇帝は、陰萎の秘薬を服しても、営みの中途で軟らかくなり憂う事や、硬度を得られず和合に至らない夜が増えていたが、
今宵は乱れる公爵に煽られ、皇帝の漢も壮健だ。皇帝は、久方ぶりに鏡の前で繋がったのが、二人に興奮をもたらしたに違いないと思った。
公爵が老いて腰を病んでからは、寝台にて腰に羽毛の枕を当てがい、公爵の腰を労りながら睦み合う事が多かった。
たまには趣向を変えてみるのも悪くない。下から力強く公爵の後蕾を穿った皇帝は、ニヤリと片頬で笑い、男臭い笑みを浮かべた。
今宵は数年ぶりに、二人揃って果てる事が出来るやも知れぬ。皇帝は馴れ親しんだ公爵の心地好い締め付けに笑い、
公爵の中で己の漢が大きくなるのを感じた。
「あっ、あっ、ああっ!陛下、陛下ッー!」
なめらかに腰を動かしながら、強弱をつけて公爵の花芯を扱く皇帝に喘がされ、
公爵は皇帝の掌に、限りなく透明に近い乳白色の飛沫を放った。
ほぼ同時に公爵の中で達した皇帝は、繋がったまま背後から公爵をギュッと抱きしめ、肩に口づけると満足げに笑った。
「こんなにも心地好い吐精が、まだ出来るとはな……」
満面の笑顔でしみじみと呟き、悦に入っている皇帝に公爵は恥じらいながら頷いた。
久方ぶりに精を射する事が出来た爽快感と、皇帝のすべてを受け入れた昂揚感が、公爵の下腹部で溶け合っている。
心地好いけだるさに浸りながら公爵は、皇帝の老いてなおぶ厚い胸板に背中を預けてもたれ掛かり、うっとりと目を閉じた。
50年前は、この男に背中を預ける日が来るなど思いもしなかった。



121 :風と木の名無しさん:2012/01/30(月) 10:05:11 ID:vEbQDPGU0
【名前欄】アラウンド70 3/4
【メール欄】sage
【本文】
55年前、先帝は有力貴族を後ろ盾に持つ異母弟の公爵を、皇太弟として次期皇位継承者に定めた。
けれど5年後、先帝が崩御した日、野心に燃える先帝の第一王子が挙兵。皇位継承をめぐり宮廷は皇太弟派と王子派に二分された。
軍部を味方につけ戦を制した金髪の王子は帝国を簒奪し、大陸統一の夢を追って辺境の蛮族との戦いに明け暮れる。
大敗した皇太弟は、領地と爵位を剥奪され、収監された監獄の檻の中で、ずたずたに犯された。
皇太弟には皇帝を憎んで余りある正当な理由がある。
反乱軍に救われ牢を脱した皇太弟は、反乱軍の先頭に立ち、時に辺境の蛮族と共闘し帝国軍と戦った。
狡猾な戦略で帝国軍を苦しめた皇太弟は、反乱軍の毒蛇と呼ばれ、金獅子王の好敵手となる。
ハルクロードの戦いで皇太弟は憎い皇帝を追い詰めた。が、皇帝の半身的存在の従卒が、身を盾にして皇帝を守ったため取り逃がしてしまう。
乳兄弟でもあった最愛の従卒を殺された皇帝は、皇太弟を憎悪した。
翌月、友だと信じていた蛮族の長に裏切られた皇太弟は、捕縛され帝国軍に売られる。
皇帝は仇敵を殺そうとしたが、皇帝の右腕の宰相は敗軍の将の才を惜しみ、彼を手厚く遇した。
生きて生きて生き延びて、いつの日かこの手で皇帝を殺す。そのために、皇太弟は矜持を捨て皇帝の臣下にくだった。
頭も股も使えるものは皆使った。蛮族の鎮圧で功績を挙げた。反乱軍と和議を結んだ。
麗しい微笑で牙を隠し従順な犬を演じながら、目覚ましい手腕を発揮した青年は、宰相の執り成しで旧領と爵位を復する。
公爵領の領民は、待ち望んでいた領主の帰還を喜んだ。



122 :風と木の名無しさん:2012/01/30(月) 10:05:39 ID:vEbQDPGU0
【名前欄】アラウンド70 4/4
【メール欄】sage
【本文】
翌年、帝国は突如半島に侵攻してきた外海の異教徒に聖地を奪われる。聖地奪還のため、皇帝と公爵は力を合わせて戦った。
敵にすると厄介だが、味方にすると頼もしい。皇帝は公爵がいれば、己がどこまでも強くなれる気がした。
公爵も然りだ。皇帝と共に戦うのは楽しく、酌み交わした勝利の美酒は、たまらなくうまかった。
宰相はこれを機に、皇帝と公爵が蟠りを捨て歩み寄る事を願ったが、二人の確執は根深かった。
40年前、訳あって肌を重ねてからも、いがみ合っていた二人を、仲睦まじくしたのは時の流れだ。
老いを受け入れ、互いを労る心を持てた5年前、二人はようやく肌と共に心を重ねる事ができた。

そうして今に至る。

鏡の前の椅子で皇帝と繋がった公爵は、果てた後も繋がったまま、公爵の花芯を愛撫する皇帝の皴深い大きな手に小さく喘ぎ、
麗しい笑みを浮かべると、
ほっそりとした首を後ろに捻り、長くゆるやかな白髪をかき上げながら、背面の皇帝に口づけた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



123 :風と木の名無しさん:2012/01/31(火) 13:19:54 ID:Ok8Kyi0w0
>>119
done.

124 :風と木の名無しさん:2012/01/31(火) 13:57:06 ID:wXUTkVU2O
>>123
助かりました。
投下ありがとうございます。
お手数をおかけしてすみません。

125 :風と木の名無しさん:2012/02/22(水) 13:18:04 ID:XbrmXoxk0
度々すみません。忍法帖のレベルが上がらず長文を投下できません。
お手数おかけしますが、投下代行お願い致します。

【名前欄】アラウンド70 1/2
【メール欄】sage
【本文】
皇帝×公爵 
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース! 

お愛ぼいなと思うのは、をかしいのかもしれない。けれど銀髪の皇帝は、寝台で杯片手に書を捲る、
おのれより年長の白髪の男が愛らしく思えてならない。腰に羽根の枕を当てがい書を読んでいた公爵は、
っ……! と小さく喘ぎ、読みかけの書を枕元の飾り棚に置くと、おいたをする皇帝の不埒な手を
ぴしゃりと叩いた。老いてなお精悍な銀髪の皇帝は、麗しく老いた公爵の胸の双茱を、夜にだけ匂う珍しい
らんの花の香油をまとった指でツンとつつき、はだけた胸元から覗く公爵の双茱が悪いのだと
にやりと笑い悪さを続けた。公爵は思う。ただ同衾し語らうだけで、なにもない夜も二人ならいつも幸せだ。
できることなら今宵は、まろやかな酒を飲み交わしながら、ゆうるりと書を捲っていたかった。けれども、
ききわけのない皇帝が、杯を傾けながら胸の双茱をつつくため、公爵は書見用の眼鏡を外した。
なにもない夜も楽しめる。そんな歳になったはずだが、なにを求められれば老いた花芯がじわりと濡れて、
いつもこうして流される。数十年間、認めることが出来なかった恋心も、一度認めてしまえば木々の若葉が


126 :風と木の名無しさん:2012/02/22(水) 13:19:43 ID:XbrmXoxk0
【名前欄】アラウンド70 2/2
【メール欄】sage
【本文】
萌えいづる様に伸びやかに、枝を広げて萌えさかる。麗老なる公爵は、陰萎ゆえ指玩に走り、「卿の胸は
えも言われぬな」 と嘯く皇帝の手を優しく払うと、恋い慕う皇帝の下肢に男娼のように傅いた。
をかしいと思う。かつては恥辱の極みだと思っていた。けれど今は皇帝の花芯を口に含める。その昔己を
投獄した男の下肢に傅きながら公爵は微笑み、寄る年波に負け、猛々しさを失って久しい皇帝の
下陰へ恭しく接吻した。挿入もままならない陛下を、この手と口で、勃たせてさしあげたい。老い衰え、
できぬことも増えたが、時の流れを今は寿げる。けれど時折、胸に蘇るあの男の眼差しだけがただ苦い。
きらきらと光る芳香花の精油を用い、皇帝の老いた花芯を優しく慰め、高ぶらせながら公爵は、緋紅色の
るこう草を思わせる鮮紅の目をした皇帝の最愛の友を思い出した。彼を殺めたのは公爵だ。その事実を
棚晒しにしたまま、わけあって皇帝と肌を重ねたのは40年前。今も皇帝の胸には彼が棲んでいる。心が
にわかにかき曇り公爵は自嘲した。皇帝の唯一無二になりたいと欲する、老いて貪欲になった己が憎い。
感傷的な物語の脇役の気分だ。切なげにため息した公爵を皇帝はきつく抱きしめた。皇帝が没したのは、
謝肉祭の三日目だ。皇帝は公爵を想いながらも、迎えに来た緋色の瞳の友の手を取り天上に旅立った。 Fin

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ! 代行ありがとうございます。


127 :風と木の名無しさん:2012/02/22(水) 14:58:16 ID:OPd87Uwg0
>>126
( ^ω^)おっおっ

128 :風と木の名無しさん:2012/02/22(水) 15:01:36 ID:OPd87Uwg0
>>126
終わったお
2レス目タイトル間違えちゃった
ごめんなさいなんだお

129 :風と木の名無しさん:2012/02/22(水) 16:42:40 ID:XbrmXoxk0
ありがとうございます。お手数お掛けしました。

タイトル間違えちゃったのは
気にしなくていいんだお

130 :風と木の名無しさん:2012/02/23(木) 23:11:00 ID:3BNmG12AO
忍法帳レベル不足のため、代行お願いいたします。
このレス含め7レスほどお借りします。

【名前欄】蛙軍曹 緑と黄 0/6
【メール欄】sage
【本文】
蛙軍曹の緑黄緑です。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

131 :風と木の名無しさん:2012/02/23(木) 23:12:00 ID:3BNmG12AO
【名前欄】蛙軍曹 緑と黄 1/6
【メール欄】sage
【本文】
 いつも通りだった筈だ。どこにも間違いなんか無かった。
 朝からの自分の行動を思い返しながら、クルルは困惑していた。
 用事を済ませて、いつもの通りにケロロの部屋でケロロに背を向けて端末を弄っていた。
 だが今、クルルはケロロの膝――というか足――に頭を乗せ横になり、体にはブランケット。
 おまけに眼鏡は奪われ、代わりのようにケロロの手のひらが乗せられていた。
 どうして、こうなった。

 事の発端はこうだ。
 クルルが端末で作業をしている間、ケロロはガンプラを作っていた。それは実に当たり前の光景で、ぶつぶつギャーギャーと騒がしくプラスチックの塊と戯れる姿は特に注意を向けることの無いようなものだった。

132 :風と木の名無しさん:2012/02/23(木) 23:13:14 ID:3BNmG12AO
【名前欄】蛙軍曹 緑と黄 2/6
【メール欄】sage
【本文】
 ふと、ケロロの独り言の域を超えたガンプラへの愛が聞こえなくなった。
 僅かに動く気配を感じたクルルが顔を上げ、ケロロの方へと顔を向けると、思いの外ケロロが近くに来ていて、思わずびくりとのけぞったクルルを笑うでもなく、じっとクルルの顔をのぞき込んでいた。

「……なんだよ、隊長」

 含む色の無い、ただ真っ暗で深いだけの瞳に気圧されて、いつもの軽口も出て来なかった。
 蛇に睨まれた蛙ってのはこんな気分か、と些か現実逃避じみた事を考えながら見つめ返す。何となく目をそらしたら負けな気がする。
 無言で動かずにいたケロロの目が、急に不愉快そうに細められた。そうして、じとりとした視線とともに一言。

「……顔色が悪い」

 言うが早いか、バサッという音と共に視界が奪われ、体を半回転させられケロロの足に落とされた。


133 :風と木の名無しさん:2012/02/23(木) 23:13:55 ID:3BNmG12AO
【名前欄】蛙軍曹 緑と黄 3/6
【メール欄】sage
【本文】
「っ、なにしやがる!」
「お黙んなさい! 休憩を命じるであります!」

 突然の不可解な仕打ちに、非難の声をあげたクルルを押さえて、ケロロは怒ったように言う。

「ふんとにもー、まぁたろくに寝てもいないんデショ。ダメダメ! しっかり休めやこらー!」

 まくし立てられ気圧されているうちに、眼鏡を奪い去られ、目隠しをするように頭を押さえられて、すっかり逃げられなくなってしまっていた。
 そして、冒頭に戻る。
 自分の顔色が悪いなんて、それこそいつもの事だろう。確かに、ここ数日作っていた物があったため、睡眠時間は少なかったかもしれない。
 それでも、疲労を顔に出すような事はしていない筈だった。
 そもそもクルルは、自分の弱みを見せることなどまずしない。

134 :風と木の名無しさん:2012/02/23(木) 23:14:42 ID:3BNmG12AO
【名前欄】蛙軍曹 緑と黄 4/6
【メール欄】sage
【本文】
 ただでさえ生来恨みつらみを買いやすい性質の上、トラブル&アクシデントが信条なのだから、ポーカーフェイスはお手の物である。
 そんなクルルに、顔色が悪いから休め、と言う。居心地の悪い感覚に身じろいでいると、上からクスクスと小さな笑いが聞こえた。

「なんだよ……」
「ふふ、何で解ったんだーって感じだからさ」
「……何で」
「解るよ、クルルの事だもん」

 まあ全部じゃ無いけど、大体何となくね〜。
 気楽に言ってのけるケロロに、クルルは些かぐったりした気分になった。

「理由になってねぇ……」
「えー、そう? てか早く寝なさいよ。あ、子守歌とか歌ってあげよっか」
「イラネ」
「即答かよ! かっわいくねーな!」
「く〜っくっくっく」


135 :風と木の名無しさん:2012/02/23(木) 23:15:57 ID:3BNmG12AO
【名前欄】蛙軍曹 緑と黄 5/6
【メール欄】sage
【本文】
 くだらないやり取りをして、なんだかもう起き上がる気力も尽きてきたクルルはため息を一つ吐き、体の力を抜いた。
 一気に押し寄せる倦怠感に、気づかないうちに結構な疲労が溜まっていた事を思い知った。

「……本当に寝ちまうぜぇ」
「どーぞどーぞ、瞼が溶けるほどお休みなさい!」
「普通目玉だろ。く〜っくっく」

 諦めて本格的に寝に入ったクルルの耳に、微かに届いた音。低く掠れて、でも微かに甘いような、小さな歌声。
 古いいつかの歌は、少しだけ引きつるような胸の痛みを残して、クルルを眠りへと連れて行った。

 地響きのような音と、ギリギリという固い物を擦りあわせるような音で目を覚ましたクルルは、何事かと辺りを見回して、ケロロに眼鏡を奪われていた事を思い出す。

136 :風と木の名無しさん:2012/02/23(木) 23:16:51 ID:3BNmG12AO
【名前欄】蛙軍曹 緑と黄 6/6
【メール欄】sage
【本文】
 這うようにして見つけた眼鏡を装着し、改めて音の正体を探ると、何のことは無い。大の字になって寝ているケロロだった。
 つまり、地響きのような音はケロロのいびきで、ギリギリという音は歯軋りだったのである。

「……うぅん……ふぇ、ぶえぇっくしょい!」
「……コイツはどうやったて締まらねえな」

 年上ぶって人の心配をしてみせた結果がこれだ。
 今にもよだれを垂らしそうな寝顔に呆れながら、先ほどまで自分に掛けられていたブランケットをケロロに掛けてやる。

――まあ、後で礼くらい言っとくか――

 放置されていた端末を起動し直したクルルは、寝こけている癖に騒がしいケロロの額に口付けを一つ落とした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

137 :風と木の名無しさん:2012/02/24(金) 17:49:40 ID:CYDSzyZQ0
>>136
( ^ω^)おっおっ

138 :風と木の名無しさん:2012/02/24(金) 18:17:15 ID:CYDSzyZQ0
>>136
終わったお
1レス目ミスしてごめんなさいだお

バイさるがキツかった…3レスでくらうのは厳しいよー

139 :風と木の名無しさん:2012/02/24(金) 19:17:19 ID:XLrvUzeYO
>>138
ありがとうございます。お手数おかけしました。
ミスは気にしなくていいんだお

140 :sage:2012/03/09(金) 20:52:47 ID:u00g7JdM0
アップローダーにうpしましたので、
どなたかよろしくお願いします。

141 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:01:11 ID:8nyR280w0
忍法帖レベルが足りませんでした。お手数おかけ致しますが投下代行お願い
します。
【名前欄】御簾振 屑×牛 「その淑女、ふしだらにつき」1/6
【メール欄】sage
【本文】
文庫本書き下ろしの牛尾女装設定
エロはなし
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

十二支・華武合同合宿にて、両監督の悪ノリにより、悪夢のエスコート肝試しは再び開かれた。これは、その時のお話―。


142 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:02:04 ID:8nyR280w0

【名前欄】御簾振 屑×牛 「その淑女、ふしだらにつき」2/6
【メール欄】sage
【本文】
屑桐・牛子ペア
会話・なし。雰囲気・殺伐。屑桐・おされ気味。牛子・暴走気味。
はたして一言目を発したのは。
「たかだか女装子ひとり口説く勇気もなくて?」
牛子その人であった。スカートを翻し口撃は続く。
「あなたいつも王者、王者って言ってるけれど、名門校ってブランドに守られないと
何一つできないのかしら?」
これは痛いところを突いたらしく、ただでさえ強面のかの人の眉間の皺がより深く刻まれる事態を引き起こした。
「…このようなバカげた事に付き合うつもりはない」
地の底から響くように重苦しい声。怒っている、完璧に怒っている。
「あらそう。その『バカげた事』ひとつうまくこなせないようじゃ、華武の天下も貴方の代でおしまいね。お気の毒に」
ぴしり。屑桐のこめかみの血管が浮き出る音。
「…貴様は、あの後輩達に毒されすぎだッ!!」
「楽しくてよ」
一喝もうまく切り返され、キレた屑桐のほうが途方に暮れる事態に突入した。


143 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:03:02 ID:8nyR280w0
【名前欄】御簾振 屑×牛 「その淑女、ふしだらにつき」3/6
【メール欄】sage
【本文】
「…望みはなんだ」
彼はようやく、この悪ふざけの産物であるイベントを乗り切らなければ、今日の安眠が保証されない事を悟ったようである。
「そうねえ…。ねえ、ベンツとロレックスとシャネル買ってぇ」
「……」
「今晩はフランス料理ね。ハワイ旅行も行きたいわぁ」
「………だまれ成金女。貴様の入る墓石を買ってやるわ」
「んもぅ、ケチくさい男はこれだから」
「…」
ピキピキ。屑桐の血管の血流が劇的に速くなる音。
「アタクシお金のない男は興味ナッシングでございますわよ」
空気はもはや険悪である。
「なんてね。そんなちゃちなことはもうすべて経験済み。
牛尾家は旗本…今で言えば華族の血筋でございますの。高祖父は貴族院に勤めておりました。明治に入って財閥の令嬢を娶って、家柄も門地も手に入れましたの。成金とは最も縁がございませんことよ」
そこだけは訂正してくださらない。そう言われて、屑桐は腹を立てつつ素直に謝罪した。
「すまん」
「そう。それから」
彼女(?)の抗弁はどうやら続くらしい。もう勝手にしろと思いつつ、一応は耳を傾ける屑桐。


144 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:04:20 ID:8nyR280w0
【名前欄】御簾振 屑×牛 「その淑女、ふしだらにつき」3/6
【メール欄】sage
【本文】
「男の価値はお金ではございませんことよ。無論、顔や中身なんて綺麗事も言いませんわ。
男は、器。甲斐性がすべて」
言っていることは真っ当なのか、ふざけているのか。金と甲斐性って被ってないかと思いつつ、どういうことかと屑桐は訊く。
「責任を取る能力。ここ一番という時にすべての責任を背負って動き、弱きものを守って行動できるか、否か。そういう面では、貴方は見込みがありそうな気がしましてよ。」
貴方にとっての女の価値も聞いてみたいわと突っ込まれ、ムチャ振りだと思いつつ屑桐は自説を披露する。
「大和撫子だな。趣味が古いと言われても構わん。尽くし体質で、文句を言わずに三歩下がってついてくるような性質が好ましい。良妻賢母になりそうなら、尚良し」
「さだ●さしの世界ですこと」
「お嬢さん育ちは絶対に無理だ。贅沢をさせてやる余裕もなければ、苦労をさせない保証もできん」
どうだ、とばかりに牛子を見る。『貴様は圏外も圏外だ』と宣言したも同然の発言に、さすがの彼女も退くことを屑桐は疑っていない。
「つまりは、」
牛子は余裕の微笑みを崩さずに切り返してくる。
「幸せにできるだけの甲斐性もないと。戦わずして負けを認めるということでよろしくて?」
贅沢ではなく、幸せ。そう言われては、さすがに屑桐も反論せざるをえなかった。
彼は裕福な生活を体験してはこなかったが、体に幸せの記憶は持っている。


145 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:05:24 ID:8nyR280w0
【名前欄】御簾振 屑×牛 「その淑女、ふしだらにつき」4/6
【メール欄】sage
【本文】
「貴様にとって幸せとは、なんだ」
「愛こそすべて」
即答である。
「お金なら、アタクシがなんとでもできますもの」
なんとも太っ腹なセリフである。
「ねえ貴方」
さあ、今こそ最高の殺し文句を。
「アタクシに惚れたら、逆玉に乗れますわよ」
身体ひとつでいらっしゃい。そう締めくくり、自信に満ちた美しい微笑みを牛子は浮かべる。こころなしか、屑桐には彼女の後ろに黄金色の後光が差して見えていた。
「フハハッ!フハハハハハ!!」
気がつけば屑桐は笑い出していた。
「…なにがおかしくて」
「貴様が口説いてどうする」
もっともなツッコミである。エスコート肝試し、奥深し。
「それにな」
赤い瞳に、一瞬にして焔を宿らせて。
「他人に恵んでもらうものなぞ、何一つない。俺の幸せも栄光も、俺がこの手で自ら掴み取ってやるわ。貴様も心しておけ」
「何年先になることやら」
「…出世払いという言葉を知らんのか」
「将来性を買え、ということですわね。先物取引はリスクが大きいというのに」
ため息をついた後、まあいいわと笑顔を上塗りして、牛子は繊細な細工が施された手袋をつけた腕を差しだす。
「さらっていきたまえ」
男言葉に戻ってるぞと屑桐はツッコミをいれようと思ったが、手のかすかな震えを見て、不問に賭してやろうと思い改めた。
「悪いお嬢さんだ」
「ふしだらなのはお嫌い?」
返事の代わりに腕を掴むと、ぐいぐいと引っ張って勝手に旅館の方向へ戻る。


146 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:06:34 ID:8nyR280w0

【名前欄】御簾振 屑×牛 「その淑女、ふしだらにつき」5/6
【メール欄】sage
【本文】
ふたつの、手。
片方は、夢を掴みかけている手。大きく、節くれだった働き者の手。
もう片方は、慈愛の手。自らの犠牲を省みず、未来の大選手を炎から守り抜いた手。
「…貴様はどうして皮膚の移植手術を受けなかった」
「逆に訊くよ。これから顔の火傷痕を治療する気はある?それと同じさ」

同じ傷を異なる場所に引きずったという、事。目に見える繋がり。忌まわしいというには哀しすぎ、懐かしいというには激しすぎ、愛しいというには歪すぎる繋がりであった。
嫌でも、相手を忘れない。
「…随分と遠回りしたな」
「…長かったね。でも、またここに居られる」
いくらか余裕を取り戻した牛尾、もとい牛子は艶然と微笑み言葉を続けた。
「アタクシ、この立ち位置が大変気に入っておりましてよ」
「そうか」
気がつかないふりも、淑女の嗜みのひとつ。
耳まで真っ赤になっている屑桐をうしろから見ながら、牛子は自身の母が語っていた信条を思い出していた。


147 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:07:31 ID:8nyR280w0
【名前欄】御簾振 屑×牛 「その淑女、ふしだらにつき」6/6
【メール欄】sage
【本文】
無断で旅館に戻った両校のキャプテンは、涼しい顔でまったりとくつろいでいた。
「二人してしけこみやがった」とは、この手の機微に敏い口の悪い某後輩の証言である。
お互いに軽口を叩くようになった両人の様子が「まるで熟年夫妻のそれであった」とは、両校の後輩達に共通した感想であったという。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
色々とミスってご迷惑おかけしました。
これ終わったら半年ROMります

148 :風と木の名無しさん:2012/03/16(金) 12:12:12 ID:8nyR280w0
うわ、スミマセン、3がふたつあった。
×1・2・3・4・5・6/6→○1・2・3・4・5・6・7/7

重ね重ねもうしわけありませんでしたm(_ _)m

149 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:33:02 ID:6fdELTVQO
忍法帖レベルが足りませんでした…。どなたか代行をよろしくお願いいたします。

【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 1/8
【メール欄】sage
【本文】
生注意。エロ有り注意。一角獣 太鼓×唄です。

すっと腕を伸ばして、背中を撫でると 唇を尖らせた顔で振り向いてくる。
俺はそれが可笑しくて、何度も何度も繰り返していたら、ついに猫パンチを食らってしまった。
「痛いのー。叩くことなかろぉ」
「あんたがしつこいからじゃろ!」
「だって本ばっか読んで、ちーっともこっち向いてくれんじゃないか」
「向く必要がないわ。暇ならでてけ」
相変わらずつんけんしているが俺はわかってるよ。本当に出て行ったら寂しがるんよ、この猫ちゃんは。



150 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:35:50 ID:6fdELTVQO
【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 2/8
【メール欄】sage
【本文】

「じゃあ海老のとこ行こうかの。海老なら構ってくれるからね。夕ミ才と違って優しいし」
「……勝手にすりゃーええやろ」
「(あっ拗ねた。)」
昔から意地っ張りだったけど、なんかさらにひどくなってる気がする。
でも俺はそれがかわいいと思う。素直だともっと嬉しいけど。
「本当にいいの?出て行っちゃうよ」
「……」
「いなくなっていいの?」
「……いなくなる…のは嫌だ」
う〜んやっぱりかわいい。その寂しそうな顔が俺は大好物だ。だから夕ミ才を引き寄せて、顔を覗き込もうとするがそっぽを向かれてしまう。
「じれったいのう」
「うっさい」
「キスくらいさせてよ」
半ば無理矢理、夕ミ才にキスをする。たいてい最初は暴れるんだけど、しばらくすると大人しくなるんだよね。



151 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:37:22 ID:6fdELTVQO
【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 3/8
【メール欄】sage
【本文】

「んん…」
夕ミ才の力が少し抜けていくのがわかるとシャツの中に手を入れてみた。
「ちょ、ちょお」
「なに?」
「キスだけじゃないんか!」
「えー?」
キスだけで俺が満足できるかい。ただでさえ構ってくれなくてしかも腹減ってるのに。
というか、なんだかんだいって夕ミ才も抵抗してないし。
「最後までやっちゃっていいでしょ?」
「どーせ最初からその気なんじゃろ」
「わはは、さすが夕ミ才。わかっとるなぁ」
「笑っとる場合か」
とはいえここは控え室だから、誰か来ちゃうんだよね。一応鍵は掛けてあるけど、声が聞こえちゃわないように俺はテレビの音量を上げた。



152 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:38:36 ID:6fdELTVQO
【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 4/8
【メール欄】sage
【本文】

行為に浸っている途中、俺の携帯が鳴った。こっそり画面を見ると、アへ¨の名前が。
「あ、はあ、あ…ぅっ」
「…夕ミ才」
「あぁ…っ」
「聞いてる?」
「はっ…、な、なんじゃ」
「アへ¨から電話だ」
「へ…、アへ¨…?」
「何件か着信入っとるから出たほうがええか」
「ま、待…」
俺が電話に出ると、民生は声を出さないよう慌てて口をふさいだ。
だけど俺はちょっといじわるしたくて、腰の動きを再開してみた。
「うわっ!!」
「もしー?あ、ごめんねー。出れなくて」
「か、皮二っさん!」
「え?今ね、夕ミ才といるんよー」
「………っ」
一生懸命声を抑えてる夕ミ才がかわいくて、ますます動きを早める。



153 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:41:04 ID:6fdELTVQO
すみません…>>149
>生注意。エロ有り注意。一角獣 太鼓×唄です。
の後、一行ほど改行入れてくれるとありがたいですorz


154 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:45:52 ID:6fdELTVQO
【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 5/8
【メール欄】sage
【本文】

「今何しとるかって?夕ミ才とセックスしとるよ」
「!」
その一言を言った瞬間、夕ミ才の顔がみるみる青ざめてゆくのがわかった。
普段仲がいいアへ¨に、こんなこと報告されたら夕ミ才もたまらないだろうねえ。可哀想に。
と思いながらもかまわず会話を続ける。
「はは、本当だって!今ねぇ、すごいことになっとるよ」
しばらく固まっていた夕ミ才だったが、俺がアへ¨に状況を伝えていると少しずつ表情と声が変わっていった。



155 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:47:26 ID:6fdELTVQO
【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 6/8
【メール欄】sage
【本文】

「あぁ。あのねー、すごいよ。出たり入ったりして。こうやって話してるとね締め付けがすごい。」
「…ん!く、うぅ!」
「アへ¨にも見てほしいよ。俺のにぎゅうぎゅう締め付けてきてさ、アソコもドロッドロだし〜」
「は、はぁっ、あぁ!」
「夕ミ才もすごく気持ちいいって。」
「ぁ、あっ、ひっ」
「アへ¨聞こえる?この声」
「や!!いっ…、」
「ほら夕ミ才も見てみい、ここから出入りしとるじゃろ」
「皮、二…っさぁんっ、たの、むからぁ!」
「あとでアへ¨にも写真送っとくからの」
「うあぁっ!だっ、もう!イッ…くっ、うぅあぁ!」
「おわっと!」
夕ミ才が歯を食いしばり、ぎゅっと目を閉じた瞬間、アソコから大量に発射して俺の顔にも少しかかりビクビク脈打ちながら自身の身体にも飛び散っていった。



156 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:48:21 ID:6fdELTVQO
【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 7/8
【メール欄】sage
【本文】

「うわあーすごい。夕ミ才大丈夫?」
大きく呼吸を繰り返す夕ミ才の頬を軽く叩くと、涙が出ている事に気づく。
さすがにやりすぎた、とちょっと後悔していると、夕ミ才が俺にゆっくり顔を向けてそのまま携帯を取り上げた。
「………」
「夕ミ才、ごめん。嘘だよ。電話はかかってきてたけど、出てないから」
「…この…クソ、ジジイ」
「ちぃといじめてみたかったんよ、ごめんな」
するとさっきの猫パンチとは遥かに違う重さの連続平手打ちを俺は喰らうことになった。
「あだっ、いたたっ!死ぬ〜!」
「黙っとれジジイ!アへ¨を利用しやがって!!さっさと抜かんかい!!」
「死後硬直しとるから無理じゃー」
「なに意味わからんこと言っとるんじゃ!!」



157 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 00:52:22 ID:6fdELTVQO
【名前欄】一角獣 太鼓×唄「オヤジの逆襲」 8/8
【メール欄】sage
【本文】


それからしばらくして、俺と夕ミ才は電話に出なかった事でアへ¨に怒られてしまった。
「夕ミ才も皮二氏さんもなーにやってたんだよぉ!」
「俺は悪くない!」
「夕ミ才がねぇ、俺のこと構ってくれたんだ。」
「んなことより!俺の電話無視するんなら二人とも当分一緒にいちゃだめだぞ!」
「安心しろ!もう二人きりにはならんから」
その後、夕ミ才は俺を見ては威嚇するようになり、仕方がないので他のメソバーにちょっかいを出すと
それはそれで怒られるようになったのだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


158 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 11:40:25 ID:JlqXOcho0
>>140
完了。1レス目重複投稿して申し訳ない。

続いて>>141-148


159 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 11:53:55 ID:JlqXOcho0
>>141-148完了。

続いて>>149-157

160 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 11:56:41 ID:JlqXOcho0
>>149-157完了しました

161 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 12:44:51 ID:6fdELTVQO
>>160
お疲れ様です!
どうもありがとうございました!!

162 :風と木の名無しさん:2012/03/17(土) 23:18:27 ID:yuACVfOI0
>>159,160
おお、気がつけばアップされてた!
どうもありがとうございました!!


163 :風と木の名無しさん:2012/03/30(金) 06:23:24 ID:GOiZQym60
忍法帖レベルが足りませんでした。お手数おかけ致しますが投下代行お願いします。

【名前欄】音のなる方へ 3/3
【メール欄】sage
【本文】
「…なに?」
「泣いてたから」
「…ごめん」

なんでだよ、って言おうとして
ごめんって言葉が先に出てきた。
絶対に、想いの通じない好きな人の胸に抱かれて
慰められながら気にしてないからなんて言われて。
知ってたけど、残念過ぎるだろ。

背中に手を回して肩に顔を埋めれば
髪に顔を寄せられて、優しく優しく
抱きしめ返された。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・`)イジョウ、ジサクジエンデシタ

手稲の報われない愛と、よく分かってないけど
手稲が可愛いとか思っちゃう末っ子旭川もえwww

本スレに3/2まで投稿済み。最後まで出来なくて申し訳ないです。

164 :風と木の名無しさん:2012/03/30(金) 17:33:26 ID:J6T60Dkk0
>>163
( ^ω^)おっおっ

165 :風と木の名無しさん:2012/03/30(金) 17:34:32 ID:J6T60Dkk0
>>163
終わったお

166 :風と木の名無しさん:2012/04/20(金) 03:14:38 ID:4tmxqWqw0
忍法帖レベル不足のため、投下代行をお願いいたします。

【名前欄】灯台守の話 1/9〜9/9
【メール欄】sage
【本文】 http://morara.kazeki.net/upload/img/085.txt

お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。

167 :風と木の名無しさん:2012/04/20(金) 21:34:03 ID:IKm7vNVU0
>>166
( ^ω^)おっおっ

168 :風と木の名無しさん:2012/04/20(金) 21:51:31 ID:IKm7vNVU0
>>166
終わったお

169 :166:2012/04/21(土) 01:42:38 ID:K5L5TiZ20
>>167 >>168
投下ありがとうございました!
おかげさまでコメントをいただけて嬉しかったです

170 :風と木の名無しさん:2012/04/21(土) 20:23:28 ID:cbdoTY5c0
レベル不足のため、すみませんが投下代行お願いします。

【名前欄】イ寺せんたい 十→殿←金「夕陽とイクラとガーネット」 1/9〜9/9
【メール欄】sage
【本文】 http://morara.kazeki.net/upload/img/086.txt

一応32行以内ごとに分割してますが、もし入りきらない等あれば
適当に改行を消したりしていただいて結構です。
よろしくお願いします。

171 :風と木の名無しさん:2012/04/22(日) 02:26:19 ID:763w6YeE0
>>170
( ^ω^)おっおっ

172 :風と木の名無しさん:2012/04/22(日) 02:48:30 ID:wn9P11IY0
>>170
終わったお

173 :風と木の名無しさん:2012/04/22(日) 09:15:34 ID:eGckNDF60
>>172
どうもありがとうございました!

174 :風と木の名無しさん:2012/05/04(金) 13:50:23 ID:7vhAKy3Q0
レベル不足のため、お手数ですが投下代行お願いできますでしょうか

【名前欄】レーザービーム1/5〜5/5
【メール欄】sage
【本文】

超次元野球。丑→葛な話。卒業後。一人語り。
・実在の歌がモデルになってる
・時系列は捏造
苦手だと思われた方は申し訳ないですがスルーお願いいたします
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

耳に覚えのあるヒットソングが管楽器の音で流れてくる。吹奏楽部の練習なのだろう。
十二支高校野球部は、昨年の夏・今年の春の快進撃により、県内をはじめ校内からの扱いも一変した。
潤沢な部費が支給され、朝礼で表彰され、
校内で応援団が組織されブラスバンドも漏れなくついてくるようになったらしい。
「うらやましいな」
昨年この高校を卒業し、自分の道を歩み始めたかつての主将はつぶやいた。
全面的に背中を押されて、期待を背負って戦いに赴く後輩達。
自分が不遇であったなどとは思わないが、この独特の熱気に包まれての
試合を体験してみたかった、というのは紛れもない真実である。
高校生活。
このきらきらとした時間と無縁になってしばらく経った。
出会いと別れは表裏一体というとおり、
経済・語学・政治とこれからの自分の役割のために学んでいくことは山ほど控えていた。
立ち止まる暇などなかったのは、踏ん切りをつけるという意味では幸運だったのかもしれない。

175 :2/5:2012/05/04(金) 13:53:39 ID:7vhAKy3Q0
「あれー、キャプテン?」
聞き覚えのある声。ひょこりと顔を出した彼は、
心なしか去年よりも顔つきが少し大人びてきたように思う。
「兎丸くん、しばらく。背が伸びたね」
「えへへ、そうかな。キャプテン今日は大学なかったの?」
「授業が休講になってね。久しぶりにここを訪ねてみたんだ」
さっきグラウンドを見てみたよと言うと、彼は嬉しそうに
近況報告をしてくれた。
「今年もねー、新入部員がいっぱい入ってきたんだよ。
ぼくに憧れて入ってきたって言ってくれた子もいてさ、
先輩になったんだしキッチリしなきゃなーって思うこともあるんだよね。」
皆、確実に進歩している。技術だけではない、精神面の成長が著しい。
かつての後輩が伸びていく姿を見るのは嬉しくもあり、寂しくもあった。
また、ブラスバンドが聞こえてくる。
「バックが豪華だと勢いがついていいね」
「今年は応援団も増えたんだよ。やっぱ去年の活躍が効いたんだね」
彼は頭のいい子だ、と思った。
「先輩」の不興を買わないよう、こちらを持ち上げて気まずい会話を回避した。
しかも鼻につくことなく、さりげなく。
流れてくるメロディーにあわせて、彼は軽く歌詞を口ずさむ。
『 グラウンドに立つ キミの姿が まぶしくて 少し照れちゃうけど 』
「あれ?『マウンドに立つ』って2番の歌詞だったのかな」
「違ったような…あ、もしかしてそれ歌ってたの、犬飼君の親衛隊?」
先ほど耳にして憶えていたのだ。
てっきり投手の詩なのだと思い込んでいた。
「僕もけっこうそそっかしいからなあ」
軽い笑い話をしていると、おそらく新入生なのだろう。
まだ高い声が彼を呼ぶのが聞こえた。
「あ、キャプテンごめんね。もう行かなくちゃ」
「こちらこそ、引きとめてしまってすまなかったね」
いつも通りに笑えているだろうか。
「みんなに会ってく?」
「…また、顔を出すよ」
今会ったら、ひたすらに高みを目指す彼らの邪魔になってしまう。
過去をわざわざ振り返らせる必要など、ない。


176 :3/5:2012/05/04(金) 13:55:02 ID:7vhAKy3Q0
帰宅し、用があるまで放っておいてくれと言い残し部屋へ篭もることにした。
何故だか泣きたくて仕方がなかった。なぜ。
普段は滅多につけないTVの電源をつける気になったのも、
そんな気分を紛らわすためだったに違いない。
適当にチャンネルをまわす。別に見たいものなどない。
ただ、静寂の中にいることだけは耐えがたかった。人工的な喧騒に包まれていたい。
リモコンを持つ手がとまる。興奮と緊張を、画面越しに受け取った。
『…さあ、白熱してまいりました。入れば虚仁の逆転、押さえれば比呂縞の勝ち越し。ツーアウト一塁、まだ勝負の行方はわかりません…』
思わず、息を飲む。煌々と照らされるマウンドには、
よく見知った人物が神経の糸を極限まで張り詰めて勝負のころあいを見計らっていた。
瞬間を、支配した者が勝つ。
対峙したことがあるから、あの戦場に立ったことがあるから、
痛いほどにその空気がわかる。


177 :4/5:2012/05/04(金) 13:56:11 ID:7vhAKy3Q0
ゆったりと体を捻る。ぜんまいを巻くように、限界まで。
肉眼では白い光線のように見えた。画面のS字の横、赤いランプがふたつ灯った。
「今のは生で見たかったな」
いつの間にか、食い入るように画面を見ていた。
まだ最大の山場は、残っている。
声援を耳が拾う。あと一球、あと一球。
深呼吸をして、心身を整えて。静かに投球体勢に入り、相手の間を読む。
永遠にも感じられるギリギリの均衡。
鋭い視線は相手の闘志も隙も、確実に打ち抜く。

一瞬。バッターが怯むのがわかった。
今だ!
球圧から生まれた風が、こちらにまで伝わるようだった。球を目で追うことができたのは、ミットに収まる直前だ。
ストレート。
「すごい」
声が震えているのは、感傷的な気分になっているからに違いない。
高校時代何十年にひとりの天才と謳われていても、才能が集う世界で活躍できるのは一握りである。壁にぶつかり、苦しみ続ける時期も確実に訪れる。
それでも。
真っ向勝負を挑み、自分の流儀を通して存在感を示し続ける。
その姿勢は、とても傲慢で尊い。
幾人もの夢も期待も背負い、無言でマウンドに立つ。
嫉妬では、ない。戸惑いでも、ない。ただただ圧倒されたのだ。


178 :5/5:2012/05/04(金) 13:57:37 ID:7vhAKy3Q0
勝負が決まり、体を支配していた力が抜けてしまった。
重力にまかせるまま、ソファに仰向けになる。
「…マウンド に、立つ キミの すがた が…」
まぶしいどころの話ではない、ドキドキするどころの話でもない。
置いていかれてなるものか。また会う時は、同じ目線で。
それが、画面の中の人物がかつて絶縁してまでも死守し、
今は自分が痛切にのぞむ立ち位置である。
戦う場所はもう違うけれど、せめて志は共有したいと思う。

『ありがとう』
画面に向かって心のうちで礼を言う。
迷いも、曇りも。一瞬にして吹き飛ばされた。あの美しいストレート。
僕は僕の道を歩いていける、キミに恥じない場所に居続けるために。
じっとしてはいられない。
そう思うと、自室の厳重な扉を勢いよく開いた―。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!



179 :風と木の名無しさん:2012/05/05(土) 23:51:22 ID:QxdMBTPQ0
done.

180 :174:2012/05/06(日) 12:20:49 ID:giqVwGfQ0
投下してくださった方、ありがとうございました!

181 :風と木の名無しさん:2012/05/15(火) 00:11:12 ID:ih291M2wO
規制の為、お手数おかけ致しますが何方か投下代行よろしくお願いします。


【名前欄】舐めてぇんだ 2/2
【メール欄】sage
【本文】
二人で緑ラベルを飲み大抵下らない話になるそんな時間も
大好きで酔って半分出来心で手を触れれば笑って
自分の手を退けないのを良いことに白い首元に噛みつく。
この男に不器用ながら優しくしたい気持ちが込み上げてくる。

首に痕を落とすと動揺して手に持った缶ビールを
軽く握り潰した彼の唇を舐めて何も言えないようにして塞いだ。


□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

本スレに1/2は投稿済みです。最後の方がどうしても投稿が出来なくて申し訳ありません。

182 :風と木の名無しさん:2012/05/15(火) 01:07:18 ID:ih291M2wO
>>181
投下できました ご迷惑おかけしました

183 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 02:47:53 ID:3TftouPc0
規制のため、お手数ですが投下代行よろしくお願い致します

【名前欄】たいせつなひと 1/6
【メール欄】sage
【本文】

半生・現行月九の新社長×元社長で新社長視点・7話冒頭周辺の話で801成分は低め
新社長が理想のヤンデレすぎて毎週ハァハァしているものの規制で全く801板に書き込めなくてつらいのでむしゃくしゃしてやった
棚への投稿は数年ぶりゆえ、お見苦しい点がありましたら申し訳ありませぬ

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!



久しぶりに寄って行かないか、と大切な人が言った。
だからああ、とだけ答えた。



「うっわ、本当に久しぶりだなこの家」
「だろ?」
「妹がこっち帰ってきた時以来じゃないか?」
「ばたばたしてたからな」
そう言いながら苦笑する横顔を見つめる。
きっと彼はまだはっきりと自覚してはいないのだろう。
奈津井誠。彼女の言葉で、行動で、心で、自身がどれだけ変わってきているのか。

184 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 02:49:09 ID:3TftouPc0
【名前欄】たいせつなひと 2/6
【メール欄】sage
【本文】

一番間近で彼を見つめ続けてきた自分だから気づくのだ。そしてだからこそ、堪えられないのだ。
心の奥底に渦を巻くこれは憧れか羨望か、それともどす黒い嫉妬の心か。
目の前の男の持つ天賦の才への。
その男を刺激し、いとも容易く変えてしまう無垢で愛らしい天使への。
果たして日優雅に変わってほしくなかったのか。
それとも彼を変えられるのは自分しかいないとでも思い上がっていたのか。
今はもう、わからない。
「でもよかった」
「何が」
日優雅が少し気まずそうに笑った。
「もう、お前とはこうやって話せないのかと思った」
まだ記憶に新しい。
株主総会の後に一戦を交えたという話は瞬く間に社内に広まり、かつてない剣呑な雰囲気を醸し出すツートップに社員たちも動揺を隠せない様子だった。
しかし一番こたえたのは何と言っても日優雅自身だろう。
多少の口論は今までに何度かあれど、そのやり方に真っ向から異を唱えたのは後にも先にもあれ一度きりだったのだから。
故意に酷い方法で傷つけた。一番彼の心を抉る言葉を選んで。
誰に何を言われても決して揺らがなかった日優雅が信じがたいほどに憔悴していたことを会いに行った妹から聞かされた。
自分の言葉がまだそれくらいの影響は与えられるのだと、暗く歪んだ悦びが湧き上がる。

『間違っていたのは俺だ。お前のやり方を疑った。ここはお前の会社だ』

185 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 02:50:03 ID:3TftouPc0
【名前欄】たいせつなひと 3/6
【メール欄】sage
【本文】

その言葉を聞いた先ほどの日優雅の表情が脳裏を過ぎった。
自信を取り戻したその顔は間違いなく自分の惚れ込んだ日優雅透そのものだった。
今までならその言葉に一片の嘘偽りもなかっただろう。
いや、今だって嘘を言っているつもりはないのだ。その証拠に日優雅は自分の言葉をただの少しも疑うことはない。
けれど確実に、自分の中では、何かが恐ろしい勢いで変質している。
もう自分でも制御できないほどに。
何が嘘で、何が本当なのか。
ただはっきりしていることはこの関係があと少しで終わるということ。他でもないこの手で終わらせるのだということ。
その時が来たら、ああ。彼はどんな顔をするだろうか。
「何言ってる。何年付き合ってると思ってるんだ」
隣に立つ日優雅の肩を抱いて諭すように力強く微笑んでみせる。
「そう簡単にお前を見捨てるわけないだろう?」
日優雅が、心から安堵した風情で笑った。



「さ、落ち着いたら少し寝ろ」
シャワーを浴びた日優雅が、まだ髪から透明な雫を滴らせたまま振り返った。
寝室の方向を顎で指し示しながら再び促す。

186 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 02:50:48 ID:3TftouPc0
【名前欄】たいせつなひと 4/6
【メール欄】sage
【本文】

「ろくに寝てないんだろう」
「僕は大丈夫だ、それを言うなら浅雛だって」
「俺のことはいいから」
「…帰るのか?」
「お前が傍にいてほしけりゃいてやるよ、だから寝ろ。今は社長が体調を崩していい時じゃない。これから大事な謝罪会見だってあるんだからな」
心許ない顔をする日優雅に柔和な微笑を浮かべながらそう囁いてやる。
「…ん」
彼がこくりと頷いた。自信家で尊大な天才、世間が抱く彼の印象からはとても想像できないほど素直で繊細な素振り。
ああ。お前は本当に子どもみたいだよ。いい意味でも。…悪い意味でも。
幼い子をあやすようにぽんぽん、と。指の先が僅かに濡れた。
寝台に腰掛け、横になる日優雅を見下ろす。足をばたつかせながら寝転がる姿が過ぎた昔を彷彿とさせた。
「お前、昔オフィスでよく寝ちゃってたよなあ」
「…そうだったか?」
「おいおい、俺が何回毛布かけてやったと思ってるんだよ」
肩を竦めて返すと日優雅がふふっと笑う。
「冗談だ。忘れるわけないだろう、あの頃のこと」
もともと体力のなかった日優雅は創業当時、慣れない作業に疲れて寝てしまうことがよくあった。
大好きなプログラムを組んでいる時は時間どころか寝食すらも忘れて没頭するくせに。
全く勝手なやつだ。それとも天才って皆こんなものなのか。
そう思いながらも、その無防備な寝顔からついつい目が離せなくて気がつけば日が暮れていたりして。

187 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 02:52:24 ID:3TftouPc0
【名前欄】たいせつなひと 5/6
【メール欄】sage
【本文】

規則的にキーボードを叩く音がふっと途切れる瞬間が変に待ち遠しく思えたりして。
一人、また一人と社員が増えるにしたがってそんな二人きりの緩やかな時間を持つことも次第に減っていったように思う。
今はもう何もかも、懐かしく思い出されるだけだ。
「あさ、ひな」
「ん?」
「……僕…は…」
声はそこで途切れ。言葉を返す代わりに、二、三度布団をさすってやる。
枕に顔を埋め、すぐに穏やかな寝息を立て始めた大切な人の髪にそっと触れた。
出会った時に人生を捧げたつもりでいた。
恋人が出来ても、伴侶を娶っても、何があっても、この後の一生はずっとこの男の隣で歩んでいくのだとそれだけは不思議と信じて疑わなかった。
きっと、互いに。
「…そうだ」
どれほど彼の外見が変わっても。どれほど自分の中身が変わってしまっても。
柔らかい髪の手触りは初めて出会った8年前のそのままで。
8年間。気づけば、あの頃の自分の年齢を彼が通り越していた。長いようであっという間だった甘い甘い蜜月。
甘く熟したその実は既に腐る時を待つだけだったのかもしれない。
「簡単じゃないんだよ、透」
どこでボタンを掛け違えたのか知れない。
それでももう自分は、この道をゆくと決めたのだ。
彼を切り捨てるその刃の先が鈍く輝く諸刃だと心のどこかで気づいていたとしても。
賽は投げられた―――もう引き返すことは叶わない。

188 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 02:53:33 ID:3TftouPc0
【名前欄】たいせつなひと 6/6
【メール欄】sage
【本文】

「…簡単じゃ、ないんだ」
そうひとりごちながら。
浅雛康介は、誰よりも大切だった人の頭を静かに撫でた。



□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

8話予告の「誰よりも日優雅さんのこと大切に思ってたでしょ!?」発言に滾ってしょうがなくてつい
毎週毎週公式が妄想の遥か斜め上をいってくれるので大変ですwwヒロインが妹より兄を恋のライバル扱い吹いたww
実は浅雛さんが真っ白エンドとか、なさそうだけど、そういう意味でも今しか書けないものを…みんなしあわせになーれ
お読み下さった方がいらしたらありがとうございました!

189 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 21:41:33 ID:knKOLALU0
>>183-188
投下しました

190 :風と木の名無しさん:2012/08/30(木) 23:52:04 ID:3TftouPc0
>>189
ありがとうございました!心より感謝です!

191 :風と木の名無しさん:2012/09/05(水) 03:31:15 ID:E0vne5qc0
忍法帳レベルが足りませんでした。お手数ですが代行お願いします。
【名前欄】新BM 2/3
【メール欄】sage
【本文】
「俺の事は放っておいてくれ」
再び背を向けて、なんとか風に逆らって歩き出す。だが、殆ど進まないうちに、今度は相手自らに前へ廻りこまれる。
押しのけて進もうとしたが、びくともしなかった。逆にその手を掴まれ、引き寄せられる。
「一緒に、帰ろう」
耳元で言われるが、無視して腕を振りほどこうとした。だが離れない。元々肉体的な力が違いすぎる上、今は酷く消耗しているのだから当然といえば当然だが。
空いた方の腕で押したり叩いたりしたが、堪えている様子は全く無かった。離すどころかよけようともせず、左手で腕を掴んだまま右手を背中に廻される。
相手からすれば、落ち着かせて説得しようとしての行為だっただろう。だが今の心持では逆効果だった。余計にむきになり、完全に頭に血が上ってしまう。
腕と背に手をかけられている上半身に比べ、下は割と自由がきく。服ごしとはいえ、相手の右手の感触が伝わってくる。
加えて、なんとしても離れようとするあまり理性を失った状態で、とる行動は一つだった。
右足を持ち上げ、体重をかけて思いきり踏み下ろす。相手の左足を狙って。
その瞬間、理性が甦り、自分が何をしようとしているのかに気付く。
なんとかブレーキをかけつつ横に逸らして、直撃させる事を避ける。だが完全に外す事は出来ず、端が当たってしまう。
そこまで大きなダメージにはならなかったようだが、触れる手が一瞬こわばり、脱力してそのまま地面にへたり込む。
その姿に完全に理性を取り戻し、慌てて横に膝をついた。
先程までとは逆に、こちらが抱くように右手を背に廻し、左手で相手の足をさする。
「……すまないっ」
下を向いて、目を伏せたままやっと声を絞り出す。
黙って、髪から背にかけて何度も撫でられる。

192 :風と木の名無しさん:2012/09/05(水) 03:33:22 ID:E0vne5qc0
【名前欄】新BM 2/3
【メール欄】sage
【本文】
不意に、疲労と痛みが甦る。相手の背に添えていた手から、続いて体から力が失われてその場に倒れ込む。
それを抱きとめられるのが分かったが、もう抵抗する事は考えなかった。
「……かえりたい」
ごく自然にその言葉が口から出る。その瞬間、心を縛り付けていたものが全て解けていった。
今まで考えた事も無いほど、相手に縋って甘えたくなる。だが、自力で動けるだけの力は無かった。
「連れてって……」
掠れた声でそれだけやっと言う。
「勿論だ」
目と同時に閉じていく意識に、その声だけはしっかりと届いていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

分割ミス&途中規制失礼しました。
DVD見たらこの二人これでもかってほど萌える。

193 :191-192:2012/09/05(水) 03:53:33 ID:X3G8WO3AO
ごめんなさい、訂正です。
192は
【名前欄】新BM 3/3
でお願いします。

194 :風と木の名無しさん:2012/09/05(水) 09:11:59 ID:gxQDn/xo0
>>193
投下完了

195 :風と木の名無しさん:2012/09/05(水) 12:35:53 ID:X3G8WO3AO
>>194
投下ありがとうございます。助かりました。

196 :風と木の名無しさん:2012/09/16(日) 14:48:09 ID:w8ZOxc4w0
すみませんが代行お願いします。


【名前欄】癒しの手3/13
【メール欄】sage
【本文】
扉が開かれた。そこは3メートル四方程度だろうか、何もないがらんとした部屋になっている。
照明はない。しかし部屋の中にはほのかに光りが射し、奥に行くほど明るさを増して石作りの壁に陰影を映し出している。
部屋の奥、一人寝のベッドの幅ほどの部分が奈落になっていた。その下から光が射している。
その手前に、ウィルは丁重に横たえられた。薄い夜着を通して冷たい床の感触が伝わってくる。
「それでは、ウィリウス殿。よくよく神をお慰めし…」
「ちょっとまって!」
やっとの思いでウィルは言葉をしぼり出した。今では恐ろしい疑問が心に渦巻いていた。
ウィルは一人で小部屋に寝かされている。信徒達は外に出て、扉を閉めようとしている。
その前に、どうしても聞いておきたい事があった。
(「私は…捕まったのですか?最初からそのつもりで、助ける振りをして…」
「恐れながら。お食事に薬を混ぜさせていただきました。我々にはどうしても、ウィリウス殿の
ような方が必要だったのです。健康で、体力もある健やかな若者が」
「…私は殺されるのですか?それとも一生、閉じ込められて…」
「そのようなことは決してございません。ただ、時間をかけて説明いたす暇のない以上
これより他に方法がございませんでした。ウィリウス殿。何卒神のため、神の御力を必要とする
全ての者たちのために、御身をもって神をお慰め申し上げいただきたい」
司教は再び跪き、恭しく頭を下げた。その姿を隠すように小部屋の扉が閉じられる。
ウィルは想像のつかない恐怖と共に、一人小部屋に取り残された。
やがて、彼らの『神』と呼ぶものが、奈落から姿を現した。


197 :風と木の名無しさん:2012/09/16(日) 14:50:46 ID:w8ZOxc4w0
【名前欄】癒しの手4/13
【メール欄】sage
【本文】
その姿を見て、ウィルは顔色を失った。
二本の長い縄のようなものが奈落から這い上がってきたのだ。
乳白色に輝くそれらは優に一握りはあるだろうか。伸縮を繰り返しながらずるり、ずるりと
ウィルに向ってにじり寄って来る。這いずった後にはそれの持つ粘液なのか、ぬらぬらとした
跡が残っている。
「なに…いやだ…」
ウィルは逃げようともがいた。だか、司教の言った薬のせいなのか、深い眠りから無理に
叩き起こされたような体はいうことをきかず爪先だけが力なく床を引っかく。
それはゆっくりと体に巻きついた。生暖かい粘液が肌に絡みつく。伸びきった表面は滑らかで
柔らかい。しかし恐ろしいほどに力強く、ウィルの体を難なく絡め取ると奈落の底へと運び入れる。
そこには神の本体とも言えるものが鎮座していた。
『神は』異様な姿をしていた。地下に開いた巨大な花のように、四方八方に乳白色の腕を伸ばし
ざわざわと蠢き燐光を放っている。顔や胴といった、いわゆる生き物らしい部分は見当たらない。
(…これが神?触手の化け物じゃないか)
恐怖に嫌悪の気持ちが入り混じる。なすすべもなく吊り上げられ、ウィルは本体に向って
運ばれてゆく。他の触手たちがウィルに気付いたように一斉に、その体を目指して伸び上がってくる。

198 :風と木の名無しさん:2012/09/16(日) 14:54:57 ID:w8ZOxc4w0
【名前欄】癒しの手5/13
【メール欄】sage
【本文】
「やめ…ろ、放せ!」
所詮は無駄な抵抗だった。言葉が届くはずもない。触手は無遠慮にウィルの体に巻きついた。
夜着の袖を払い、両腕を這い回り、指先まで絡みつき一まとめに縛める。前腕に負った傷に粘液が
塗りつけられ、ちりちりと痛んだ。
さらにもう一本。足元から縋り、巻きつきながら夜着の裾を割って進んでくる。しなやかに伸び
縮むと瘤が連なるように表面が波打ち、そこから一層身を伸ばしウィルの鼠径部に巻きつこうとする。
触手の動きに合わせ、重く湿った粘液の音がべしゃり、と響く。
限界だった。激しい嫌悪にまかせウィルは力の限り暴れた。かろうじて動く片足を振り回し
脚に絡む触手を蹴りつけようとする。つま先が触手に触れた。その表面に親指の爪を立て
力を込め引っ掻きおろす。
触手の動きが急変した。それまでの緩慢な収縮をやめ、一気にウィルの体を締め上げる。
脚に巻きついた触手はするりとウィルの男根に巻きつき、根元を締め付けるととたんに強張り
滑りもせずに力任せにねじ上げた。
「ひっ…ぎゃあああぁぁぁーーーっ」
ウィルは仰け反って絶叫した。敏感な部分を強く捻られ、痛みのあまり目の前が真っ白になる。
体の力が抜ける、しかし触手は蹂躙を止めようとはしない。両腕は頭の後ろに縛り上げられ
脚は新たな触手に押し広げられウィルの股間を無防備にさらけ出す。苦痛なほどに広げられた脚から
さらに腰へ、胸へと触手が這い進んでゆく。もう一度、男根を締める触手が大きくうねった。
「ぐあぁ…ああぁー…」
炸裂する痛みに気が遠くなる。もはや抵抗する気力もなかった。痛みに目を見開き、
大きく口を開けて浅い息を繰り返す。目の前の景色が揺らぎ、一瞬、意識が暗闇に落ちかける。


199 :風と木の名無しさん:2012/09/16(日) 14:57:31 ID:w8ZOxc4w0
【名前欄】癒しの手6/13
【メール欄】sage
【本文】
やがて、触手の動きが収まった。
ウィルは動こうともしない。涙が流れているのがわかった。暴れたためか包帯が解け
傷の上にも直接触手が取り巻いている。男根の触手は力を弱め、それをやわやわと撫でている。
しかし、痛みも快感もウィルには感じられなかった。ただ、激痛の余韻に身を震わせているだけであった。
涙を追うように、一本の触手が顔に張り付いてきた。先端を器用に窄ませながら目の周りを舐める。
薄く開いた唇をこじ開け、別の触手が侵入してくる。にじむ冷や汗が粘液と絡みあう
どこか淫靡な音が地下室に鳴り響いた。
胴を巻く一本の触手が離れ、腰骨を一撫でしてその奥へ、尻肉の間へと滑り降りる。
しばし先端で吸い付き、つつき廻したあと、探り当てた後孔をゆっくりと捏ねるように動く。
『御身をもって神をお慰め申し上げいただきたい』
司教の言葉をぼんやりと思い出す。たしかにこれでは、言葉通りの慰み者だ―
最後に一つ、陰部をぬるりと撫で、触手は硬く閉じた孔をこじ開け始める。
「んん…」
背筋に走る悪寒と新たな痛みに、ウィルはあっさりと意識を手放した。


200 :風と木の名無しさん:2012/09/16(日) 15:07:39 ID:w8ZOxc4w0
【名前欄】癒しの手7/13
【メール欄】sage
【本文】
「…気付かれましたか」
うっすらと目を開けたウィルの頭上に、穏やかな声が注がれた。
左手首に暖かなものが巻きついている。その瞬間、生暖かな触手の感触を思い出し
ウィルは飛び起きた。
緊張に身を固めながら回りを見回す。しかしそこは薄暗い地下室ではなかった。司教ほか
数人の信徒が彼を見つめている。左脇には、傷を手当てしてくれた教団付きの医者が座っている。
さっきのぬくもりは、脈を取る手だったのだろうか。
ウィルは清潔なベッドの上に寝かされていた。夜着は新しいものに着替えさせられ、触手との
接触などなかったかのように彼はこざっぱりとした姿に整えられていた。
「呼吸、脈拍、お顔の色も問題なし。少し休まれればすぐにお気力も回復されるでしょう」
医師はウィルの驚きなど意に介する様子もなく司教に見立てを述べている。
司教は一つ頷くと、ウィルの前に進み出た。
「ウィリウス殿。まずはお礼を申し上げねばなりません。昨夜の事、神はことのほか
お喜びのご様子であられました。」
深く頭を下げる。あっけに取られているウィルに対し、さらに司教は言葉を続ける。
「ごゆっくり、お休みくださいませ。しかる後に故郷に戻れますよう、手はずを整えましょう。
あるいはもし、幸いにも続けてお力添えを願えますのでしたら…」
「待ってくれ!」
叫び声は悲鳴に近かった。言いたいことは山ほどある、しかしありすぎて逆に言葉を選べない。
ウィルは必死で呼吸をととのえた。司教の目をまっすぐに見返しながら、なんとか探り当てた言葉を放つ。

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